第2回 |コラム澤口 「正しく怖がろう」

一般社団法人 日本事業戦略総合研究所(co-founder)、理事の澤口です。
全12回シリーズで、個人的に興味深かったことについて、自由気ままに書き綴って参りますので、お時間がある方はお付き合い下さい。


第2回のお題は「正しく怖がろう」です。

タイトルだけ聞くと、何やらオカルトっぽく感じる?
そちは「見える口」か?みたいな。
そうではなくて、現在、我々を大いに苦しめているウイルスについてです。

なお、冒頭で申し上げておきますが、私は医学学位を持った専門家ではありませんので、本文は「皆さんに対して何らかの行動もしくは判断を推奨する」目的を持ちません。
ではなぜ本文を書こうと思ったかと言いますと「常に正確な知識や情報を把握し、疑うことは疑いながら自らの価値観や判断に基づいて行動することの重要性」をウイルスという実体を通して問うことにあります。
つれづれに書き綴っていきます。


◆ウイルスは生き物であるか?
「ウイルス」って何かご存じですか?
言い換えましょう「ウイルスは生物でしょうか?」

2013年の麻布中学校の理科の入試問題にて「(原文には図あり)90年先の未来からやってくる青色のネコ型ロボットは生物として認められないがなぜか?」という出題がありました。
問題のリード文に生物の定義の一事項として「生物は自身が成長し子孫を作る」ことが触れられており、そこから答えは「当該ネコ型ロボットは、成長せずかつ生殖行動によって増殖することもない」となります(理科というより国語の問題、「主人公の失敗体験を通じてAIが機械学習する」とか「設定がロボットだから工場以外で生産できないのは当たり前」とか言わないように)。

ではウイルスは?(少し細かいですが)生物学者が一般的に認める生物の定義を列記します。

(定義1)
体が膜で仕切られており、膜によって「体と外界とが明確に分けられている」
→正確には「ウイルスとは、遺伝情報を持つ核酸(DNAやRNA)をタンパク質・脂質が取り囲んでいる粒子」となります

(定義2)
代謝を行い、エネルギーを使って「生命の維持活動をしている」

(定義3)
子孫を残す(自らの複製を作る)
→遺伝情報を持つ核酸(DNAやRNA)について後述します。

ウイルスにおいて、定義1定義3は成り立ち、定義2が成り立ちません。
ウイルスは自ら代謝を行わず、宿主の細胞内で生存し自らの複製を作ることで増殖します。
ということは、意外にも「ウイルスは生物ではない」という結論になります。


◆ウイルスの大きさは?
ウイルスにも様々な種類があり(各自で調べて下さい)、インフルエンザウイルスの大きさは0.1㎛(マイクロメートル)です。新型コロナウイルスも大体同じサイズになります。
このμ(マイクロ)という単位は10のマイナス6乗、10のマイナス3乗が1000分の1ですので、「1000分の1の1000分の1」と非常に小さいものです。
会話・咳・くしゃみをした時に生成される飛沫(スパコン富岳の飛沫シミュレーションはご存知?)の大きさは0.01㎛から数mm程度の範囲と大小ありまして、一番飛沫の個数が多いサイズは「2㎛前後と120~150㎛近辺」だということです。

気になるのは「そんなに小さい飛沫を隙間があるマスクで防げるか?」と思いますが、飛沫は水分で出来ており、マスクのフィルターと飛沫の間に分子間力(=引き合う力です)や帯電効果(=プラスマイナスは引き合う)が働くことで、マスクのフィルターが飛沫を引きつける力が働くことから、ウイルスを含む飛沫がマスクフィルターの隙間より小さくても飛沫の多くは同フィルターに確保され、結果としてウイルスの鼻や口への侵入を防ぐことが出来ます。
なおウレタンマスクについて、実験科学者の検証データがネットで公表されていますので、皆さん各自でご確認いただきたく(ここでは触れません)。


◆ウイルスの子孫の残し方とは?~宿主の存在~
ウイルスが世代を重ねて生存し続けるためには、必ず宿主(の細胞)が必要です。
言い換えれば「自然界におけるウイルスの住みか=自然宿主(の細胞)」の存在は、ウイルスの世代を重ねて生存するための絶対的条件になります。

「そういえば鳥インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザウイルス)とか、アフリカ豚熱とか、家畜が罹患するウイルスをニュースで見たな?」と思い出した方、その「鳥」とか「豚」、その種(しゅ)がウイルスの宿主なのです。

では、宿主が「種をまたぐこと、たとえば自然宿主は鳥で、新たにヒトを宿主とすること」はありうるのでしょうか?
答えはイエス。
エイズウイルスのように本来は霊長類を自然宿主とするウイルスが突然変異(後述します)によってあらたにヒトを宿主とする=人に感染する能力を持つことがあるので、種を超えることがありえます。

例示として、ヒトが罹患するインフルエンザウイルスの場合、本来は鴨などの水鳥の腸管に感染する弱毒性ウイルス(A型)であり水鳥はインフルエンザの病状を発しません。水鳥のいる湖や沼の水はインフルエンザウイルスのスープと言えるそうです(○尿垂れ流しなので、汚ねー)。

ところが、インフルエンザウイルスが何らかの理由、現在考えられているのは水鳥→ヒトではなく水鳥→豚を経由して突然変異(後述)によりヒトの呼吸器への感染能力を獲得したので、現在ではA型、B型、C型の3型が確認され、特にA型とB型がヒトにおいて流行するのだそうです。
この場合、自然宿主が鳥、新たにヒトが宿主になったケースです。

要するに、本来は宿主としない別の種が物理的に近い距離に存在しておりウイルスが別種に恒常的に接触し続けている場合、突然変異によりウイルスが別の種への感染能力を獲得する=あらたな宿主とすることが可能になる・・・ということです。
だからこそ、自然宿主がヒトではないウイルス(鳥インフルエンザ、正確には高病原性鳥インフルエンザ)であっても、突然変異によって容易にヒトに感染する能力(パンデミックを起こす能力)を獲得する可能性があるため、その獲得する機会を除去するために「殺処分」するのですね。
極めてかわいそうな行動の裏には、こうした事情がある訳です。

(補足)ノロウイルスについて
冬場に問題になるノロウイルスですが、宿主はヒトです(意外にも貝類ではないです)。 具体的にはヒトの小腸粘膜で増殖するウイルスですが、なぜ毎年流行するのか? ノロウイルス(が属するエンベロープウイルスというカテゴリー)は「カプシド」と呼ばれるタンパク質の殻が遺伝情報(RNA)を保護しているので、胃酸のような強い酸(強酸)にも耐え、下水処理・汚水処理における消毒でも死にません(無力化できない)。 生き残ったノロウイルスが河川から海にたどり着き、カキや二枚貝等の貝類の体内に蓄積されます。 既に得た知識から分かる重要なポイントは、ノロウイルスの宿主はヒトであり貝類ではないので、ノロウイルスは貝類の体内では増殖出来ない、貝類に影響を及ぼさないということです。 ノロウイルスに汚染された貝類をヒトが食べ、胃を経由し(胃酸を生き残り)、「揺りかご」である小腸にたどり着き増殖を始める・・・という壮大な旅です。 「河川下流の海」と「海流が流れ込む海」とで、前者で育ったカキはプランクトン豊富な海で育った「太ったカキ」であるがノロウイルスが蓄積しやすく、逆に後者で育ったカキはプランクトンが少ない痩せた海で育った「痩せたカキ」であるがノロウイルスは蓄積していない・・・。 加熱調理用が前者、生食用が後者になります。



◆(重要)感染するとは?
あらためて、「ウイルスに感染する」とはどういうことでしょうか?
感染は、全ての種において「宿主細胞の表面にウイルスが吸着すること」から始まります、言い換えると「吸着しないと感染は始まらない」のです。
ウイルスが宿主細胞に接触すると、ウイルスの表面にあるスパイクと呼ばれるタンパク質が宿主細胞の表面に露出している受容体(レセプター)を標的にして吸着します。
要は「ウイルスがその種に感染できるかどうか」は、「ウイルスが種の宿主細胞の受容体(レセプター)に対応するスパイクを持っているか」どうかです。
喩えると「スパイクが鍵、受容体(レセプター)が鍵穴」になります。 後述する抗体とは、このスパイク(=鍵)に吸着し、スパイクが受容体(レセプター)に吸着する能力を無力化するものです。
スパイクと受容体(レセプター)、必ず覚えて下さい(ワクチンのところで重要、試験に出します)。


◆PCR検査とは?~Ct値とは?~
PCR検査の正式名称はPolymerase Chain Reaction(核酸増幅法)と言いまして、増やしたい対象のDNAやRNAの断片を増幅し、ウイルスが検出できるかを調べる検査です。
同断片は、血液や便などの様々な検体から抽出します。
新型コロナウイルスにおけるPCR検査は痰などを採取して検査しますが、無症状で痰が出ない場合にはインフルエンザ検査と同様に鼻から鼻咽頭の粘液や細胞を採取、現在は唾液から採取していますね。要は、PCR検査は新型コロナウイルス用の特別な検査ではありません。

ということは、「PCR検査で陽性反応」とは、検体からウイルスの断片が検出されているに過ぎません。

先ほど「増幅する」と言いましたが、この増幅回数のことをCt値で表し、日本はCt40、米国はCt30、台湾はCt35となり、日本だけ突出して高い、要するに「増幅回数が多い」のです。 この増幅は検査感度であり指数関数的に行われるので、Ct40は単に40倍になるのではなく40乗になるので、似たようなDNAの断片、たとえば「普通の風邪コロナウイルス」の断片を40乗に増幅した(巨大化した)後に、よく似ている新型コロナウイルスと間違えて判定する場合があるのです。

英オックスフォード大学の研究チームは「PCR検査が死んだウイルスの残骸を検出している可能性がある」という報告を発表しており、他にも「Ct値が40を超えると採取したウイルスの約8割が増殖できない」との研究結果も報告されています(日経の記事にもなっておりました)。 日本において「PCR陽性でも無症状」という事例が非常に多いように見受けますが、こうした事情と無関係でしょうか・・・Ct40というCt値を問題視する医学専門家も多くいらっしゃいます。
感染(既出)とPCR陽性は、実は「全く異なる事象」であり、擬陽性の温床と言っても過言ではない、と個人的に考えます。


◆毒性とは?
先ほどのインフルエンザウイルスのケースで、水鳥には弱毒でヒトには強毒とありました。
これは、その種が固有に持つ初期防御機構(自然免疫、後述)が、そのウイルスの病原性に合っているかに依存しており、それによって弱毒・強毒が決まるそうです。
要は、水鳥とインフルエンザウイルスの「付き合いは長い」ので、水鳥の自然免疫がインフルエンザウイルスの病原性を「完全に押さえ込んでいる状態」と解釈出来ます。

逆に、インフルエンザウイルスとヒト(という種)との「付き合いは短い」ので、全てのヒトが自然免疫ではインフルエンザウイルスの病原性を「押さえ込むことが出来ない状態」と解釈されます。

完全に押さえ込むためには自然免疫の次のフェーズである獲得免疫(後述)や、タミフルやリレンザ等の各種治療に頼らなければならない、という風に解釈出来ます。


◆ウイルスが子孫を残す(自らの複製を作る)仕組みとは?
先ほど触れた「ウイルスの遺伝情報を持つ核酸(DNAやRNA)」が担います。

DNA:
言わずと知れた生命の設計図、我々が持つ遺伝情報を記録する二重らせん構造です。

RNA:
RNAはDNAと同じ核酸ですが、違いはRNAが「特定のタンパク質を製造するため、長いDNA配列の一部を転写して合成する鋳型である」ということです。

RNAとは、(無駄に長い、実に98%は意味が無い)DNAに書き込まれた「特定タンパク質を合成する設計図部分」だけを鋳型(RNA)に転写したもの、と考えればいいです。
タンパク質合成を担う組織であるリボソームに設計図を運ぶ役目を持つRNAをメッセンジャーRNA(mRNAと表記)と言います(ワクチンのところで後述)。

ウイルスは、タンパク質を合成するリボソームも合成のための原料等もを持っていません。
ウイルスが宿主細胞に侵入した後、ウイルスの複製に必要なタンパク質を生成するため「ウイルスのDNAから転写したmRNA」や「ウイルス自体のmRNA」により、宿主細胞のリボソームや酵素を道具として活用して増殖します。「乗っ取る」訳です。
最終的に利用された宿主細胞は死滅し、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に放出されることで、更なる連鎖増殖を行うことで爆発的に増殖します。


◆突然変異とは?
主なRNAウイルスであるエンベロープウイルスを概観すると、突然変異は次の通りです。

  • ・インフルエンザウイルスは分節したRNAを持っており(RNAが7部分に分かれていると考えれば良い)、違う分節のRNA部分同士が交錯して(=絡み合って)組み合わせが変わり突然変異が発生する。
  • ・エイズウイルスはDNA→RNA→DNAを合成する際のRNA→DNA逆転写時に突然変異の発生率が高いとされる。
  • ・コロナウイルス(新型含む)はRNAがそのままmRNAの機能を果たしてタンパク質合成に使われており、転写時のエラーが修復されないことで突然変異が発生する。

DNAを基礎とするDNA→DNAの遺伝情報の伝達は、そもそも転写エラーが発生しにくく、転写エラーが発生した場合の精巧なエラー修復機構や破棄機能があるので正確に機能します。
一方、RNAを基礎とする遺伝情報の伝達においては転写エラーが発生しやすく、かつウイルスの遺伝情報の伝達手段(リボソームとか)が宿主細胞に依存しており、ウイルスの種類によって転写エラーが入りやすい訳です。全て「相手=宿主細胞」にお任せなので。
逆に、同じウイルスでもDNAタイプのウイルスであれば、突然変異(この文脈では転写エラー)が極めて発生しにくいことになります(天然痘ウイルスはDNAタイプ)。

ウイルス側から見ると、生存のため自分の遺伝情報を元にしたタンパク質合成を迅速に行うことが重要であり(スピード命、もたもたしていたら宿主の免疫機構に対応される)、宿主の免疫機構の攻撃を無力化するためには「変化し続ける」ことも重要になります。
無論、突然変異によるウイルスの遺伝情報の変化の全てがウイルスの生存に有利という訳ではなく、自己増殖能力が損なわれる(=死んでしまう)変異が入る場合も多いのでしょうが、こうした場合は自然淘汰されるため我々には検出不能なので知るよしもありません。

一方、ウイルスのスパイク構造をわずかに変化させる突然変異が発生した場合、この変異によりウイルスが宿主の獲得免疫からの認識や追跡・対応から逃れること(後述)や、新たな種への感染能力の獲得(新たな宿主の獲得=新たな受容体(レセプター)への対応能力獲得)につながる場合があり、ウイルスの生存可能性が大きく増すことになります。ポケモンの進化のようですね。

現在、新型コロナウイルスにおいて「○○株」と言われる新種は、こうした転写エラーによりウイルス表面のスパイクが変化し、より感染しやすい能力(より受容体(レセプター)と接合しやくすくなり、細胞内に侵入しやすい能力)を獲得したものであり、犬や猫といった「種を超えた感染事例報告」も上記理由で説明出来ますね。


◆免疫機構とは?~自然免疫と獲得免疫~
免疫機構とは、我々の体に備わっている防衛機構であり、ウイルス等の病原体から体を防御し、老廃物やがん細胞を処分し、あるいは傷ついた組織を修復する働き=機構の総称です。

自然免疫は、免疫細胞が「自分と自分以外(非自己)を認識し、非自己である病原体を認識し攻撃することで病原体を排除することです。
具体的にはマクロファージや好中球といった細胞が病原体を食べることで処理しており、自然免疫の中でもこのような食作用を持つ細胞のことを貪食(どんしょく)細胞と呼びます。
免疫細胞が「一度体内に侵入した病原体(抗原)の情報を記憶する」ことを免疫記憶と呼ぶが、最近の研究で自然免疫でも免疫記憶がおきていることが判明しております。

獲得免疫は、一度侵入した病原体の情報を記憶し、再び侵入された時に一早く対処できるよう学習する機構です。獲得免疫は自然免疫のように先天的に備わっていないため、あくまで罹患して後天的に獲得する能力です。

獲得免疫の担い手となる主な細胞は以下の通りでして、この順番に機能します。
  • ヘルパーT細胞
    抗原に感染した細胞を一早く発見しB細胞に抗体を作らせる
  • B細胞・形質細胞
    B細胞は抗体を作り侵入した異物が危険かどうかを判断する、形質細胞はB細胞が成熟した細胞であり抗体を量産する
  • キラーT細胞
    ヘルパーT細胞からの指令によって感染した細胞を破壊する
  • 制御性T細胞
    他の免疫細胞に攻撃の終了を指令することで、免疫反応を抑制する
  • メモリーB細胞
    抗原の情報を記憶する

ワクチンを理解する上でも、一通りの流れを知っておいて損はないでしょう。

 

(補足)逃避変異とは?
最近目にするようになった「逃避変異」とはウイルスの突然変異の一形態であり、「ウイルスが感染した細胞が、免疫機構、特にキラーT細胞から見えない(ステルス=隠れる)ようにする機能」を指します。
具体的には、前述の通り、ウイルス自体は抗体によりスパイクが阻害されて細胞への感染機能が一定レベルに抑えられますが、一方で、キラーT細胞が「ウイルスに感染した細胞」を認識しない限りは感染細胞を攻撃しないので、感染細胞が生き残り、徐々に感染細胞が優位になります。
この「感染細胞がキラーT細胞から攻撃されない」ようにウイルスが変異することを逃避変異と言います。



◆ワクチンとは?
ワクチンとは、病原体から作られた無毒化あるいは弱毒化された抗原を体内に投与し、病原体に対する抗体生産を促進して免疫を獲得する治療薬のことです。
代表的な種類に「生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイド、mRNA」があります。

  • 生ワクチン
    病原体であるウイルス(細菌)が持っている病原性を弱めたものを体内に投与して「その病気に自然にかかった状態とほぼ同じ免疫力」の獲得を得るもの。病原性を弱くしたウイルス(細菌)が体内で増殖するため、接種後1~3週間で自然に罹患したと同じ軽症状が出る場合がある。最近よく目にする「ウイルスベクター」とは、化学的に弱体化した別のウイルスにより「対象とするウイルスの断片、たとえばスパイクタンパク質」を体内にデリバリーし、免疫機構を刺激するワクチンである。
  • 不活化ワクチン
    病原性を無くしたウイルス(細菌)の一部を体内に投与するものであり、生ワクチンに比べて免疫力がつきにくいため、数回に分けて接種する。インフルエンザワクチンが代表例。
  • トキソイド
    感染症によっては細菌の出す毒素が免疫を作るのに重要な場合があり、毒素の毒性をなくして免疫を作る働きにしたもの。
  • mRNA
    (重要)メッセンジャーRNAであることは前述の通り。ウイルスが細胞内に侵入するには宿主細胞の受容体(レセプター)に「合致したスパイク(鍵)」が必要であるので、このスパイクを形成するタンパク質を作り出す設計図をmRNAとして体内に投与し、細胞内のリボソームでスパイクと同じタンパク質を大量に作り出し、細胞から排出されたスパイクと同じタンパク質を免疫機構(前述ヘルパーT細胞)に認識させて(=教えて)獲得免疫の仕組みで抗体を作り出す。


とこで、新型コロナウイルス用に開発された主なワクチンは次の通りです。
  • ・ファイザー・ビオンテック(米国)
    mRNA
  • ・モデルナ・NIAID(米国)
    mRNA
  • ・アストラゼネカ・オックスフォード(英国)
    生ワクチン(ウイルスベクター)
  • ・シノバック(中国)
    不活性化ワクチン
  • ・国立ガマレア疫学研究所(ロシア)
    生ワクチン(ウイルスベクター)

前述の天然痘ウイルスのようなDNAタイプのウイルスは、転写エラー=突然変異が極めて起こりにくいため、一生のうちに一回ワクチンを接種すれば「ウイルスが変化しないので一生ものの免疫を獲得する」ことになります。
ウイルスの「遺伝の仕組みが不安定であること」は、実はウイルスにとっては生き残り戦略だったのですね。


◆ワクチンの副反応とは?
ワクチンに限らず、異物を体内に入れれば何らかの副反応が生じます。

副反応とは免疫反応そのものだそうで必然だそうです。
インフルエンザウイルスのワクチン接種後、なんとなく体がだるいとか軽い風邪のような症状が出る場合がありますが、これは総称して副反応と呼ばれています。

特に重篤な副反応として、アレルギー反応や運動神経阻害のギラン・バレー症候群が報告されているようです。ただ、全体から見るとインフルエンザワクチン等の既知のワクチン接種と発現頻度は同程度なので、殊更に危険性を気にする必要は無い、と言われています。

強い副反応、特に「ワクチン接種により症状が悪化する症例」も報告されており、
  • ・ワクチン接種によってウイルスの侵入が増強される抗体依存性免疫増強(ADE)
  • ・できた抗体とウイルスが結合して肺に炎症を引き起こすワクチン関連増強呼吸器疾患(VAERD)
も実験室レベルで確認されているそうです。ケースとしてあり得る、ということ。

特に気になることは、今回の新型コロナウイルス用のワクチンは、どれも「臨床現場で時間を掛けた治験を行っていない、要するに中長期時間軸において何がおきるか誰にも分からない」という点です。そんな無責任な・・・、という感じですが、現状はその通り。
日本は薬害で苦しんだ国ですので、ワクチンの安全性について神経質にならざるを得ません。

これは余計なお世話かも知れませんが、特にmRNAワクチンに関し、
  • ・調律がとれた細胞活動環境に対して
  • ・突然「ウイルスのスパイク・タンパク質を作る設計図=mRNA」を大量に送りつけ(筋肉注射)
  • ・リボソームを働かせてスパイク・タンパク質を大量に合成し
  • ・スパイク・タンパク質をヘルパーT細胞に認識させて獲得免疫を活性化させる
という仕組みなので、免疫学の専門家によると「mRNAワクチン接種は体内にスパイク・タンパクの工場を作るようなもの、極めて精緻な人の免疫システムにおいて「工場」が暴走したらどうなるのか誰にも予測できない」とのこと・・・。
中長期的な臨床試験が不可欠な理由は「ここ」にあります。

私も何人かの医学専門家に直接聞きましたが、「一般に強いワクチンには強い副反応がつきもの」だそうで、「何年か経過してから突然死が増える気がするが、その死因はあくまで心不全であり、ワクチンの副反応との因果関係は誰にも分からない」「だから、俺はワクチンを接種・・・」という方が複数人いました(自己責任でご判断を)。


◆国別の抗体保有率の違いが意味するものとは?
抗体保有率とは、調査母集団における「新型コロナウイルスの抗体が検出された人数」を表す割合です。抗体を保有しているということは、前述の獲得免疫のフェーズまで病状が進行した人なので、過去・現在において罹患者です。ただし、抗体自体は数ヶ月で失われるそうですので、母集団における罹患者の「のべ人数」が分かる訳ではありません(突然変異よるスパイク構造の変化に獲得免疫が対応するため、改良したワクチンを継続的に接種し続ける理由がここにあります)。

興味深いのは、海外と日本の間で抗体保有率の「桁が違う」ことです(調べてみて下さい)。
現時点で科学的検証を得ておりませんが、この桁の違いを説明するシナリオは次の通りでしょうか。
  • (シナリオ1)
    日本人(アジア人を含む)は自然免疫で押さえ込み、獲得免疫に移行しない
  • (シナリオ2)
    日本では、海外ほどのパンデミックが起きていない

どっちなのでしょうね?
前述のPCR検査の基準とか、複合要因に理由があると個人的に考えます。


◆その他のトピックとは?
新型コロナウイルスとの戦いにおいて、今後の研究により、
  • ・人種の違い=ゲノムの違いによるウイルス耐性
    →ネアンデルタール人のゲノムの有無による影響、なんて研究もあるようです
  • ・国ごとの食生活等の生活習慣の違いによるウイルス耐性
  • ・BCG接種等の「他の特定ウイルスに対する公衆衛生・集団免疫」によるウイルス耐性
などが明らかになっていくでしょうから、目が離せないサイエンストピックでもあります。


以上で「つれづれ」は終了、あらためて冒頭から読み直すことを提案します。
二回目の方は下記へどうぞ。


以上、予防行動に必要と思われる知識を整理できましたね、皆さんもいろいろ調べてみて下さい。
本コラムは医療系コラムではありませんので、話を元に戻しましょう。

お題は「正しく怖がろう」でしたね。


新型コロナウイルスとの戦いは始まったばかりであり、日々の世界中の研究者の研究により事実が日々アップデートされていますが、一方で、前述の通りウイルス側も「あたかも意志を持っている」ように突然変異(遺伝エラー)により「未知の能力」を獲得し続けています。
こうした(広く細菌を含む病原体や)ウイルスと人類の戦いは歴史において繰り返されてきました。

フランスの小説家であるアルベール・カミュの小説「ペスト」が、現コロナ禍において隠れたベストセラーだそうです。同作品を貫くテーマは「極限状態=不条理との戦い」であり、貫くメッセージは「不条理と戦う武器は人間の尊厳・誠実である」です。
なんでも、彼がナチス占領下に経験した不条理をモデルにしていると言われます。
同小説の主人公のである医師リウーやその友人タルー達が見えないペストと「極限状態においてかく戦えり」という姿勢や心境が、現コロナ禍における我々の道標になると多くの方が模索している結果だとも言えます。

感染症も自然災害も、不条理の最たるモノです。

確かに相手は目に見えない敵ですが、しかしながら我々は「呪術の世代」ではない「サイエンスの世代」です。ウイルスが残す足跡=科学的根拠は、既に述べてきたように沢山あります。
最新の研究成果を待たなくても、ウイルス本来の実態を理解することは、我々個人のレベルでも前述の「つれづれ」のように可能です。
カミュの「ペスト」には利己的な人間模様が容赦なく描かれていますが(そいつらの末路は・・・は実際に読んでご確認を)、今日においても、医療従事者やその家族、もしくは地方における感染者に対する差別が存在しており、「呪術世代?」と思ってしまうような価値判断や、更には自粛警察のような功名心なのか虚栄心なのか間違った正義心なのか判別不能ですが「私的制裁集団」が一定数存在します。

我々の日本社会は、地震や火山活動などの自然災害=理不尽に苛まれ続けてきた民族です。
特定宗教の信者である海外の方が日本人を見た際の最大の疑問点に「宗教を持たない日本人がなぜ高い公共道徳および社会秩序を発揮するのか?」「それはどこからやってくるのか?」というものがあります。「日本人は我々(海外の人)とは違う星に住んでいる」というユニーク(?)な意見もありますが、残念ながら我々日本人の中にも、カミュの「ペスト」の作中登場人物のように「非科学的な論法で自らを正当化する者」が、「無知に基づいた無責任かつステレオタイプ的な価値判断を採択する」ことが横行しています。

では、なぜそうした無知が形成されるのか?
その理由は「自ら知る」という行動を意識・無意識は別として放棄しているから、と私は考えます。

確かに見えない敵は恐ろしい、しかし「見る」ことは出来なくても「観る」ことは可能です。 更に、体系化した知識とその知識を俯瞰する術を身につけていれば、他人の話を鵜呑みにせず、更には「言葉を都合良く切り取って解釈する」ことも起こりえません。 たまたま、そうした行動と、ショートメッセージやSNS利用者が陥りやすい「自らが心地良いと感じる主張や考え方への付和雷同(某国の退任大統領の支持者が良い例です)」や「お手軽コピペ処世術(他人の意見を自らの意見とする)」との相性が良いので、知識や状況を俯瞰することも自ら吟味することもなく丸呑みで信じてしまうのでしょう(ここではSNSの功罪に触れません)。

子供でも分かる話、戦うべきはウイルスのような病原体であって人ではありません。
無知こそが「人を敵として認識させている」と考えます。

繰り返します、「自ら知るという行動」を怠るべきではないし、無知はもっての他です。
「知り得た内容」に対して自らの思考、それで足りなければ専門家の客観的なデータや知見を総動員することで、行動や言動は自然と「誠実に」なるはずであり、結果、他者に安易に「言葉の刃」を向けることにもならず、「自らの価値観・判断基準」を押しつけることもないでしょう。
仮に押しつけられても、押し返す力を持つでしょう。
知らないこと、いや「知ろうとしないこと」が悪なのではないでしょうか?


見方を変えると、これまで述べてきた「つれづれ」は医学専門家にとって常識(と思いたい)ですが、TVメディア媒体を通じて国民に啓蒙すべき医学専門家が「正しい啓蒙を放棄して恐ろしさだけを強調している」ことへの違和感を持ちます。
更には、その違和感の先にある仮説と懸念、それはTVメディア出席者が「ご用学者」であり、ある一定の目的の下に情報操作を行うためにバイアスを掛けている、という仮説と懸念です。
実際、ウイルスや時事の新型コロナウイルスに関する知識を統合的かつ簡潔に網羅しているサイトなり著述が見当たりません(もしあれば・・・皆さんに黙ってコピペ(!)していますよ)。
どのような分野であって、専門家には「素人を啓蒙する義務」があるはず。
医学専門家が、啓蒙する=伝えるという義務を放棄していると違和感を持つのは私だけでしょうか?

数理モデルについても触れますが、私もクオンツ(定量分析者)の端くれなので気がつきますが、皆さんもよく目にする新型コロナウイルスの感染拡大を説明する数理モデルの解説に関して、
  • ・前提となる時系列データ採用の解説(恣意性の定義とその排除の論理的解説)
    →そもそも、データに恣意性が入っているのでは?(感染者数を絞っている疑惑とか・・・)
    実効生産率の計算式は合っているのか?(要は、直近7日間とその以前7日間の比較)
    ワクチンの効果の定量評価があいまい(ここでは触れません、ワクチン接種後も罹患します)
  • ・数理モデルの種類選択の説明(皆さん、数理モデルは「一つしか無い」と考えているでしょ?)
    →なぜ、その統計モデルを採用したのか、という具体的かつ簡潔な説明
  • ・あらたなファクター(例:突然変異の発生、南アフリカ株とか)のモデルへの折り込み方の解説
    →新たな変数が登場する可能性は非常に大きい
  • ・各変数を変化させた場合の「あり得る未来予想図」の確率分布表現
    →数理モデルも変数定義も「一つ=ユニークではない」ので、将来予想は確率分布で表現すべきだ


といった、素人向けに誰でも理解できる、更にはこれからの若者が数理統計という科学分野に興味をかき立てられるような解説が「全くなされていない」のです(AIと親和性ばっちりですし)。 数理統計の専門家、はたまた最近巷で流行しているデータサイエンティスト達が声を上げないのはなぜなのでしょうね?
ここでも「専門家が説明義務を放棄している」と違和感を持っています。


話を元に戻して、知識獲得のプロセスをまとめると、概ね次の通りです。
  • ・知識とは他人から与えられるものではない、自らの手で集める
  • ・自らの目で見て直接聞いた知識しか信用しない、事実の真贋認定は厳格である
  • ・自らの頭で思考・咀嚼して採用の可否を判断する、知らないことは権威に教えてもらう
  • ・この繰り返し


そして、この知識獲得のプロセスを通じて「正しく怖がる」ことが我々の行動規範であると考えます。「呪術の世代」ではない、いたずらに怖がることをやめて正しく怖がりましょう。

当たり前ですが、新型コロナウイルス対応に限らず、人生やビジネスの場面における「混沌に対する攻略本」も「ハウツー本」も存在しません。正しく怖がるための必要十分な行動が何であるかを日々模索することが肝要と考えます。

しかしながら、こうした行動は磨き続けなければ一朝一夕には強化出来ません。
では、この「磨き続ける」とは具体的にどういう行動でしょうか?

それは、まさに「つれづれ」本文のように、自分の専門外(私は医療専門家ではないです)の話であっても好奇心を持って首を突っ込んで調べ、「なぜ?どうして?」と常に自らに問いかけ、一定レベルの納得感なり獲得感を感じるまでこの自己問答を続けることでしょう。
仮にですよ、ある目的を持ったバイアスが存在しても、論理的に打ち勝ちましょう。

私はそのように考え、かつ(達成レベルは横に置いて・・・)日々実践しております。

歴史学者の磯田道史氏が、スペイン風邪=インフルエンザのパンデミックを例示して、
  • ・パンデミックの後に大きく歴史が転換する
  • ・第一次大戦後のパリ講和会議において、ドイツに過大な賠償金を課すことに消極的であったとされるウィルソン米大統領がインフルエンザに罹患してことで、第一次世界大戦後のドイツに対する賠償責任追及が苛烈になり、その後のナチズム→第二次世界大戦への遠因が形成された

と見解を説明されていました。

大規模な歴史転換のみならず、パンデミックが人のライフスタイルや様式、価値観、人生観、業態の栄枯盛衰、更には社会におけるパワーバランスを大きく変えるという事象は、歴史が証明しております。
翻って、我々も毎日の情報娯楽番組に「なれ寿司のようにならされて」思考停止にならないよう「自ら調べて考えて行動しなければならない」、そう考えます。


お互い、正しく怖がるためには、日常が教材の宝庫、毎日が勉強ですね。
今回は、この辺で。


(以下は、個人的ヨタ話です)
私が毎日実践している「新型コロナウイルスに罹患しないための行動」を列記します。
概ね科学的に立証されていない(呪術か?)ことばかりなので、採用は自己責任で。
ただ・・・
各行動を意識的に実践し始めてからですが、毎年、周囲の人間が流行性感冒やインフルエンザに罹患していても私は一切罹患しておりませんよ(アルコール消毒と言った奴、出てこい!)。

  • ・手を水道水で頻繁に洗う(頻繁、石けんやアルコールは必要なし、そもそも水道水が消毒液)
  • ・(最近)不特定多数(知らない人)とは会わない、知らない飲食店には行かない
    →面談相手や店の衛生観念や基準が不明であり、不確定ファクターを排除する
  • ・ヨーグルトの○-1を毎日飲む、野菜(ジュース)を摂る
    →腸内フローラ改善のため「善玉菌補給」と「善玉菌の餌=食物繊維」を取得する
  • ・納豆や野菜のぬか漬けなどの発酵食品を意識的に摂る
  • ・(最近)電車ではつり革・手すりを使用しない(ひっくり返っても知らない、自己責任で)
  • ・(最近)帰宅時、背広やコートに水道水から作った次亜塩素酸水を「これでもか」と噴霧する
    →広告宣伝はしません、興味がある方は自ら調べて下さい、匂いも消えます
  • ・毎日、風呂では目・鼻・耳を洗う、湯船に入り必ず体温を37度以上に上げる(冬でも汗をかく)
    →自然免疫を司るマクロファージ(君達)に「喝」を入れる
  • ・(ちゃんと湯冷ましして)寝る、夜更かしをしない(夜更かし出来なくなったな~・・・歳か?)。


【2021.02.26 補足】
令和3年1月22日付けで厚生労働省が全国の地方自治体衛生担当者に出した要請文書(医療機関・高齢者施設等における無症状者に対する検査方法について(要請))に関し、添付された「新型コロナ感染症(COVID-19)検体プール検査法の指針」において、Ct値を、従来のCt40~45からCt30~35に「引き下げる」ことが推奨されています。

(以下、該当箇所の抜粋)
②検体プール検査法実施前に必要となる精度管理(妥当性の確認(バリデーション))
検体プール検査法の精度について、個別検査と検体プール検査法による検査の結果の比較・評価により、事前に確認すること。その際は、ウイルス量が多い検体のみならず、ウイルス量の少ない検体においても妥当な結果が得られることが必要であり、また、各グループについて一致率の検証ができるように最低でも同一のグループ内で5以上の検体を用いて実施すること。
Ct値は系や環境によるので、一様に定義することはできないが、例えば、感染研法による場合、検体プール検査法による検出限界を100コピー/テストとすると、Ct値では35程度になることから、Ct値30~35 付近の陽性検体をCt値に偏りなく混ぜて20以上のプール化検体を作成し(陰性検体も同数)を作成し、一致率(陽性検体を混合したプール化検体は陽性になること、陰性検体からなるプール化検体は陰性になること)が85%以上であるか確認することが適当である(FDAでは、プール化した検体数(例えば、5つの検体を同時に混合してまとめた検体)を20 以上(カットオフCtに近い検体(前述の場合であれば35)を25%以上含めることが推奨されている)として評価することを推奨している)。
なお、こうした精度の妥当性の確認については、検体プール検査の開始後も、定期的に実施すること。
※Ct値は高いほど、増幅を繰り返していることから、基本的にウイルス量と逆相関。

下線部を言い換えると、
  • ・Ct35では検体にウイルス粒子が100個含まれれば検出可能である
  • ・Ct30~35付近の陽性検体と陰性検体の一致率が85%以上であれば運用に問題ない
ということであり、Ct35近辺を推奨している内容になります。
なお、本文書は「5人まとめての検査する検体プール検査法」に対する推奨であり、一般の検査法に対して触れていませんが、検査現場は事実上の「全面引き下げ」と受け止めているそうです。

しかしながら本文書には、今までCt45から「Ct値を低減させる=増幅回数を減らす」ことについての理由説明は一切行われていません。このCt35は世界的な標準レベル(米国CDC推奨はCt30、WHOはCt34、台湾はCt35、中国はCt35~37)であるので、実務的な問題は発生しないのでしょうが、現時点で急にCt値を10相当も下げることの目的は?・・・。


一般にPCR検査の精度は70%程度と見積もられておりまして、既に説明したように「PCR検査陽性は感染とは同値ではない」ので、このCt値引き下げにより見込まれる「効果」は検査数における陽性判定の割合が減ることであり、陽性判定には「正判定」と「偽判定」が含まれます。

国として陽性判定を減らす目的は何でしょうね?・・・、皆さんも妄想してみて下さい。


【2021.03.04 補足】
興味深いことがありましたので共有します。

令和3年2月9日付けで、長崎大学が「5-アミノレブリン酸(5-ALA)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)原因ウイルスの感染抑制」に関する研究リリースを出しています。
http://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/about/info/science/science225.html

この5-ALAについて調べると、「体内で生成される一般的な天然アミノ酸で発酵食品や緑黄色野菜に多く含まれる」という説明があります。

他人に迎合することなく自らで真贋を判断することが非常に重要ですので、長崎大学の研究リリース共々、内容については皆さん自らでご確認いただき、ご判断されるべきと存じます。

【プロフィール】

澤口 宗徳(サワグチ ムネノリ)

一般社団法人 日本事業戦略総合研究所(co-founder)理事

東京大学工学部(精密機械工学科)卒業
大和銀行(現りそな銀行)において銀行実務全般および金融工学を活かしたリスク管理業務に従事。
野村證券金融研究所(現、同社金融経済研究所)出向時にクオンツ評価を投資銀行業務に活用する分析手法の開発に従事、出向後は銀行業務全般における業務推進企画に従事。
森トラストグループ投資銀行立ち上げに参画。
現在は、企業経営および新規事業立ち上げに従事。